医療機関におけるハラスメント防止対策の実践方法を社労士が解説!
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 5月1日
- 読了時間: 5分

📝 目次
✅ はじめに:医療現場におけるハラスメントの現状
近年、医療現場では患者やその家族からの暴言・暴力、過度な要求など、いわゆる「ペイシェントハラスメント(ペイハラ)」が増加しています。これらの行為は医療従事者の精神的負担を増加させ、離職や医療サービスの質低下を招く恐れがあります。医療機関は職員の安全と安心を確保するため、ハラスメント防止対策を強化する必要があります。
✅ ハラスメント防止のための基本方針の策定と周知
医療機関は、ハラスメント防止規程等を作成し、ハラスメントに対する明確な基本方針を策定し、職員や患者に周知することが重要です。例えば、国立国際医療研究センター病院では、ペイシェントハラスメントに対する基本方針を明示し、職員の人権を尊重するための禁止事項を定めています。
✅ 職員への研修と教育の実施
全職員を対象に、ハラスメントの定義や具体例、対応方法についての研修を定期的に実施することが効果的です。これにより、職員の対応力が向上し、ハラスメントの早期発見・対応が可能となります。また、厚生労働省は、医療現場における暴力・ハラスメント対策について学習できる教材を作成しており、スタッフや管理者が基本的な考え方を学ぶことができます。
近年はパワハラ、セクハラを過度に意識し、上司が一切注意しないなど、あきらかなコミュニケーション不足が散見されます。

✅ ハラスメントを過剰に意識することの影響
1. コミュニケーションの萎縮
調査によると、約88.9%の人がハラスメントを意識することで職場でのコミュニケーションに影響を感じており、約78%が神経を使っていると回答しています。特に異性や世代の異なる人との会話で慎重になる傾向が見られます。
2. 適切な指導の困難化
「ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)」という言葉があるように、過度な警戒心から上司が部下への適切な指導をためらうケースが増えています。これにより、部下の成長が阻害され、組織全体のパフォーマンス低下につながる恐れがあります。
3. 職場の雰囲気の悪化
ハラスメントの境界線が曖昧であることから、些細な言動でも問題視される可能性があり、職場の雰囲気が冷え込むことがあります。これにより、軽い冗談や雑談がしづらくなり、チームの結束力や創造性が損なわれることがあります。
✅ バランスの取れたハラスメント対策のために
1. 明確な基準の設定:ハラスメントの定義や具体例を社内で共有し、共通の理解を持つことが重要です。
2. コミュニケーション研修の実施:上司・部下間の適切なコミュニケーション方法を学ぶ研修を定期的に行い、相互理解を深めましょう。
3. 心理的安全性の確保:従業員が安心して意見を述べられる環境を整えることで、過度な萎縮を防ぎます。
4. 相談窓口の設置:ハラスメントに関する相談を受け付ける窓口(外部の社労士なども可)を設け、問題が深刻化する前に対応できる体制を整えましょう。

✅ 積極的に雑談をする
『雑談をするチームは生産性が高い』と研究結果が出ております。職場での雑談というと、勤務時間中の無駄話と決めつけて、単なる時間の浪費と考える人もいるかもしれませんが、必ずしも正解ではありません。
✅ 雑談にはいくつかの相乗効果がある
① 仕事以外のつながりができる
② 信頼感アップ
③ 心理的安全性アップ
④ 働きやすい環境が生まれる
⑤ モチベーションアップ
⑥ 発言しやすくなる
ハラスメントに過敏になりすぎず、上手にコミュニケーションをとっていきましょう!!
✅ 相談窓口の設置と対応体制の整備
ハラスメントを受けた職員が安心して相談できる窓口を設置し、適切な対応体制を整備することが求められます。また、外部の専門家(弁護士など)と連携し、必要に応じて法的措置を講じる体制を構築することも重要です。某病院では、ペイシェントハラスメント対策指針を策定し、各病院が独自に対策マニュアルを作成し、院内の体制を整備することを推奨しています。
✅ ハラスメント発生時の対応フロー
1. 事実確認:被害者から詳細な状況を聴取し、事実関係を確認します。
2. 初期対応:被害者の安全確保と精神的ケアを行います。
3. 加害者への対応:必要に応じて注意喚起や法的措置を検討します。
4. 再発防止策の検討:事案の分析を行い、再発防止のための対策を講じます。
これらの対応フローを明確にし、職員が適切に対応できるようにすることが重要です。また、医療機関は、患者やその家族に対して、ハラスメント行為には法的措置を講じる旨を明示した掲示などを行い、抑止力とすることも効果的です。
✅ ハラスメントが起こりにくい職場環境の整備
ハラスメントを未然に防ぐためには、職場環境の整備が不可欠です。例えば、職員同士のコミュニケーションを促進し、心理的安全性を高めることで、ハラスメントの発生リスクを低減できます。また、定期的なアンケート調査を実施し、職員の意見を反映した職場環境の改善を図ることも有効です。さらに、患者やその家族に対して、ハラスメント行為には法的措置を講じる旨を明示した掲示などを行い、抑止力とすることも効果的です。
✅ おわりに:ハラスメント防止対策の継続的な取り組み
医療機関におけるハラスメント防止対策は、職員の安全と医療サービスの質を守るために不可欠です。明確な方針の策定、職員への研修、相談窓口の設置など、組織全体で取り組むことが求められます。社労士として、これらの対策の導入・運用をサポートし、安心して働ける職場環境の実現に貢献してまいります。
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