【医療機関向け】特定業務従事者健康診断とは?夜勤者は必須?社労士が解説
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 1 日前
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📕 目次
✅ 特定業務従事者健康診断とは?
「特定業務従事者健康診断」とは、労働安全衛生規則第13条第1項第2号に基づき、一定の有害業務や心身に負担の大きい業務に従事する労働者に対して、事業者が実施を義務づけられている健康診断です。
これは一般健康診断(年1回)とは別に行うべきもので、対象者を誤ると行政指導の対象になる可能性があります。
✅ 対象となる「特定業務」とは?
以下の労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに 準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
医療機関で関係する代表的な特定業務は上記ヌの深夜業を含む業務です。
※深夜業には宿日直許可を得た宿日直を含みます。
✅ 実施時期・頻度
区分 | 内容 |
実施タイミング | 6か月以内ごとに1回以上(年2回以上) |
実施対象 | 特定業務に常時従事する職員(非常勤含む) |
✅ パート労働者にも健康診断が必要? ~ 常時使用する労働者とは ~
パート、アルバイト等の雇用形態にかかわらず、下記①・②の両方を満たす場合には健康診断の実施が必要です。
① 1年以上の長さで雇用契約をしているか、または、雇用期間を全く定めていないか、
あるいは既に1年以上引き続いて雇用した実績があること。
② 一週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上であること。
※ 上記の②にあたらない場合でも、①に該当し、同種の業務に従事する労働者の一週間の所定労働時間の概ね2 分の 1 以上の労働時間数を有する者に対しても、健康診断を実施することが望ましいとされています。
✅ 健康診断の項目
厚生労働省が定める実施項目
既往歴及び業務歴の調査
自覚症状及び他覚症状の有無の検査
身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
胸部エックス線検査(※)及び喀痰検査(※)
血圧の測定
貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※)
肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(※)
血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)
血糖検査(※)
尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
心電図検査(※)
(※)については下記の基準に基づき、医師が必要ないと認めた場合に省略が可能です。
項目 | 医師が必要でないと認めるときに左記の健康診断項目を省略できる者 |
身長 | 20歳以上の者 |
腹囲 | 1.40歳未満(35歳を除く)の者 2.妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者 3.BMIが20未満である者(BMI(Body Mass Index)=体重(kg)/身長(m)2) 4.BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者 |
胸部エックス線検査 | 40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者 1.5歳ごとの節目年齢(20歳、25歳、30歳および35歳) の者 2.感染症法で結核にかかわる定期の健康診断の対象とされている施設などで働いている者 3.じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者 |
喀痰検査 | 1.胸部エックス線検査を省略された者 2.胸部エックス線検査によって病変の発見されない者または胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者 |
貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、 血糖検査、心電図検査 | 35歳未満の者および36~39歳の者 |
✅ 実施方法と費用
医師による診断が必要
一般的には外部の健診機関と契約して実施
費用は事業者負担(労働者に負担させることは禁止)
✅ 実施結果と措置
診断結果は原則として労働者本人に通知し、診断結果によっては次のような措置を講じる必要があります。
就業制限(例:夜勤回数の制限など)
配置転換の検討
医師の意見を踏まえた業務軽減
産業医との面談実施
✅ 実施しなかった場合のリスク
労働安全衛生法違反による行政指導や是正勧告
健康障害発生時に労災認定が不利になるリスク
職員からの訴訟・労基署通報の可能性も
✅ 社労士が支援できること
対象者の判断と基準の整理
健康診断実施の社内ルール作成(就業規則への明記など)
実施スケジュール・外部機関の紹介
労働安全衛生管理体制の構築支援
✅ まとめ
特定業務従事者健診は、年1回の定期健診とは別に実施が必要です
医療機関では、夜勤従事者が対象
実施の可否や対象者選定に迷ったら、社労士へご相談を!!
MSL社会保険労務士事務所では、医療機関向けに特化した労務サポートを提供しています。