【医療機関向け】労働保険料の年度更新の仕方を社労士が解説
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 2 日前
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✅ 目次
✅ 労働保険の年度更新とは?
「年度更新」とは、前年度の労働保険料(雇用保険+労災保険)の精算と、新年度の概算保険料の申告・納付を行う手続きです。
毎年6月1日~7月10日までの間に、事業主が所轄の労働局に提出・納付します。
✅ 医療機関が対象となる労働保険とは?
病院・クリニック・歯科医院などは、原則として以下の保険に加入義務があります:
労災保険(全従業員対象)
雇用保険(週20時間以上勤務の職員などが対象)
これらの保険料を計算・精算するのが「年度更新」です。
✅ 年度更新でやること(3ステップ)
【STEP 1】賃金集計(対象期間:前年度4月~当年3月)
全従業員の賃金総額を集計します
雇用保険に加入している従業員の賃金総額を集計します
算定基礎賃金集計表を作成する(提出はしないため、エクセルなどで作成も可)
※賃金には役員報酬、災害見舞金、出張旅費などは含まれません。
※基準は締日となっており、例えば、3月末締めで4月25日に給与を支払う場合、労働保険ではこの給与を3月分の給与として扱います。つまり、3月31日までに締め日を迎えた賃金は、4月に支払う場合であっても3月分として算定基礎賃金に含まれます。
▶ 医療現場での注意点:
【労災保険】パートや非常勤の医師、看護師・医療事務も対象に含めた全職員
【雇用保険】雇用保険に加入している全職員
【STEP 2】申告書の記入・提出
「労働保険 概算・確定保険料申告書」に以下を記載
対象労働者数を記入
労災保険分に全従業員の賃金総額を記入
雇用保険分に雇用保険に加入している従業員の賃金総額を記入
一般拠出金に全従業員の賃金総額を記入
労災保険料率、雇用保険料率、一般拠出金率を掛け、右欄に記入
労災保険分、雇用保険分を足し、労働保険料を記入
概算保険料も同様に同額で記入(賃金総額が100分の50未満、100分の200を超える場合は見込み額を記入)
延納の申請
差引額・充当意思を記入
※労働保険料は原則一括納付ですが、10月1日以降に保険関係が成立した事業ではなく、次のいずれかの条件を満たす場合は分割納付(延納)が可能です。
・概算保険料が40万円以上
・労災保険か雇用保険のどちらかのみに加入しており、その保険料が20万円以上
分割納付を希望する場合は「延納の申請」の欄に「3」を、一括納付する場合は「1」を記入します。
なお、労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合には、保険料の額を問わず延納が可能です。
【STEP 3】保険料の納付
申告書提出と同時、または後日、金融機関・電子納付で支払います。
▶ 【STEP 2】※の場合は、**分割納付(3期)**も選択可能です。
✅ 提出・納付期限に注意!
提出期間:6月1日~7月10日まで(毎年)
遅れると、延滞金・追徴課税の対象になることも。
✅ 年度更新に必要な書類
概算・確定保険料申告書(労基署または電子申請)
賃金台帳(職種ごとに集計、提出不要)
前年度と当年度の出勤簿・給与明細(確認用)
✅ 医療機関がつまずきやすいポイント
よくあるミス | 解説 |
賃金総額の誤計算 | 労災保険、雇用保険は分けて考える |
料率の誤適用 | 病院か診療所かで労災率が異なる場合あり |
適用除外職員の処理漏れ | 雇用保険非該当の週20h未満パートなどの扱い |
✅ 電子申請もおすすめ
GビズIDを使ったe-Gov申請なら、
・窓口に行く手間が省ける
・提出控えをすぐにダウンロード可能
などのメリットがあります。
✅ 社労士によるサポートも可能
MSL社会保険労務士事務所では、
年度更新の代行
賃金集計のチェック
過年度の訂正申告
など、医療機関に特化したサポートを提供中です。