社会保険の「扶養」とは?基準や手続き、よくある誤解を社労士が解説!
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 5月30日
- 読了時間: 4分

社会保険における「扶養」とは、健康保険・年金保険の制度の中で、一定の条件を満たす家族が被扶養者として認められることを指します。扶養に入ることで、保険料の負担なしに健康保険の適用を受けられるなどのメリットがありますが、誤った判断や手続きミスが多いのも事実です。本記事では、扶養の対象者や年収基準、実務上の注意点について解説します。
📕 目次
✅ 社会保険における扶養とはどういう制度?
まず、大前提に税法上の扶養、社会保険上での扶養の意味は異なります。本記事では社会保険における「扶養」について説明させていただきます。
社会保険における扶養とは被保険者が生計を維持している親族を、健康保険などの対象に加える仕組みです。扶養に入っている家族は、自身で保険料を支払わずに医療給付を受けられます。
✅ 扶養に入れる家族の範囲
健康保険の被扶養者として認定されるには、
主に被保険者の収入で生計を維持していること
一定の親族関係にあること
の2つが必要です。
① 同居が要件とされない親族(別居でもOK)
以下の親族は同居していなくても扶養に入れます。
配偶者(内縁関係を含む)
子(養子含む)
孫
兄弟姉妹
父母などの直系尊属
※ただし、仕送りなどで生計を維持している必要があります。
② 同居が必要な親族(同居が扶養の条件)
以下の親族は、同居していなければ扶養に入れません。
おじ・おばなどの被保険者の三親等以内の親族(①に該当する人を除く)
被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子者の父母・祖父母
上記の配偶者が亡くなった後における父母および子
※「同一世帯で生計を維持している」ことが要件です。
📌 まとめ表
扶養に入れるか | 家族の種類 | 同居要件 |
○ | 配偶者、子、孫、親、兄弟姉妹 | 不要(別居でも可) |
○ | 配偶者の親、甥姪、おじおば等 | 同居が必要 |
× | 知人、友人 | 不可 |
✅ 扶養に入るための年収の基準
原則として、年間収入が 130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満) であり、かつ被保険者の収入の半分未満であることが条件です。
この年間収入は今後の見込みであり、今年1月〜12月の収入という意味ではありません。
※130万年には賞与、通勤手当なども含みます。
※学生でアルバイトをしている子どもでも、収入基準により扶養から外れます。
✅ 130万円の壁・106万円の壁とは?
よく話題になる「年収の壁」は、扶養認定や保険加入義務の境界を示しています。
130万円の壁:この金額を超えると、被扶養者から外れ、本人が保険加入義務を負う可能性があります。
106万円の壁:週20時間以上働き、従業員数51人以上の企業では、年収106万円以上、2ヶ月を超える雇用の見込みがある条件で厚生年金・健康保険の適用対象になります。ただし、学生は除く。
※従業員51人以上カウント方法はフルタイムの従業員+週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員となります。つまり、短時間のパート従業員などは含まないということになります。

✅ 扶養認定に必要な手続き
被扶養者の追加には、**「被扶養者(異動)届」**を年金事務所に提出する必要があります。
添付書類:被扶養者の戸籍謄(抄)本、住民票の写し
ただし、次のいずれにも該当するときは、続柄確認のための添付書類を不要とすることができます。
被保険者と扶養認定を受ける方双方のマイナンバーが届書に記載されていること。
上記の書類により、扶養認定を受ける方の続柄が届書の記載と相違ないことを確認した旨を、事業主が届書に記載していること。
※事業主が確認した旨を記載していない場合でも、子の出生を契機とする届出の場合を除き、被保険者と配偶者の婚姻関係、または被保険者と20歳以下の子との親子関係を明らかにする場合で、被保険者と扶養認定を受ける方に日本の戸籍がある場合は添付書類を不要とすることができます。
✅ 扶養を外れるケースとは?
次のような場合には、速やかに扶養から外す手続きが必要です
扶養者の就職・収入増加
離婚や別居
死亡
✅ 実務でよくある注意点とQ&A
Q:パート収入が月10万円程度あるが、扶養に入れる?
A:年間収入見込みが130万円未満なら扶養可。ただし賞与や通勤手当にも注意。
Q:扶養のままで収入が増えたら?
A:速やかに事業主に報告し、扶養削除手続きが必要です。
✅ まとめ
社会保険の扶養に関する制度は、見落としやすいポイントが多く、正確な判断と手続きが求められます。特に年収の壁にかかるかどうかは、企業の担当者やご家族にとって重要な分岐点となります。不明点がある場合は、社労士など専門家に相談することをおすすめします。
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