超過勤務手当(残業代)の計算方法を社労士が解説!
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 5 日前
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📝 目次
✅ 超過勤務手当とは?
超過勤務手当(残業代)とは、労働者が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合に支払われる追加の賃金です。また、深夜労働や休日労働に対しても、割増賃金が支払われます。これらは労働基準法第37条により定められており、使用者は適切な割増率で計算された賃金を支払う義務があります。
✅ 残業代の基本的な計算方法
残業代は以下の計算式で求められます:
残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数
1時間あたりの賃金は、月給制の場合、次のように計算します:
1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間
ここで、月給には基本給や役職手当、資格手当などが含まれますが、家族手当や通勤手当、住宅手当、賞与などは原則含まれません。
※家賃に応じた住宅手当ではなく、一律に支給される住宅手当は基礎賃金に含める
1ヶ月の平均所定労働時間=1 年間の所定労働日数×1 日の所定労働時間÷12
✅ 割増賃金の種類と割増率
労働基準法に基づく割増賃金の種類と最低割増率は以下の通りです:
• 時間外労働(法定労働時間超え):25%以上
• 深夜労働(22時~翌5時):25%以上
• 休日労働(法定休日):35%以上
• 時間外労働(60時間超):50%以上(2023年4月以降、中小企業も適用)
• 時間外労働+深夜労働:50%以上
• 休日労働+深夜労働:60%以上
これらの割増率は、労働者の労働時間帯や労働日によって異なります。

✅ 所定休日とは?
所定休日とは、企業が独自に定めた休日であり、法定休日(労働基準法第35条に基づく週1回以上の休日)以外の休日を指します。多くの企業では、週休2日制を採用し、1日を法定休日、もう1日を所定休日として設定しています。
💰 所定休日の労働に対する割増賃金
所定休日に労働させた場合、以下の条件に応じて割増賃金の支払いが必要となります:
• 週の総労働時間が40時間を超えた場合:超過分に対して、25%以上の割増賃金(時間外労働手当)を支払う必要があります。
• 1日の労働時間が8時間を超えた場合:超過分に対して、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
• 深夜時間帯(22時~翌5時)に労働した場合:その時間帯の労働に対して、25%以上の割増賃金を追加で支払う必要があります。
なお、所定休日の労働が法定労働時間内(1日8時間、週40時間)に収まっている場合、割増賃金の支払い義務は発生しません。
例:1日7時間、週35時間勤務(月曜〜金曜)で土曜日に7時間勤務(休憩除く)した場合
5時間は割増せず、残りの2時間は1.25倍の割増となる
✅ 残業代の具体的な計算例
以下に、月給制の従業員が時間外労働を行った場合の残業代の計算例を示します:
例:月給30万円、所定労働時間:1日8時間、月の所定労働日数:20日、時間外労働:30時間
1. 1時間あたりの賃金 = 300,000円 ÷ (20日 × 8時間) = 1,875円
2. 残業代 = 1,875円 × 30時間 × 1.25(割増率)= 70,312円
したがって、該当月の支給額は、基本給30万円に残業代70,312円を加えた370,312円となります。
例2:月給30万円、所定労働時間:1日7時間、月の所定労働日数:20日、所定外労働:15時間、時間外労働:15時間
1. 1時間あたりの賃金 = 300,000円 ÷ (20日 × 7時間) = 2,143円
2. 残業代 = 2,143円 × 15時間+2,143円 × 15時間 × 1.25(割増率)= 72,326円
したがって、該当月の支給額は、基本給30万円に残業代72,326円を加えた372,326円となります。
✅ 注意点とよくある誤解
• 所定休日に出勤した場合は1.35倍にする必要はない。
• 1分単位での計算:残業代は1分単位で計算する必要があります。切り捨てや切り上げは原則として認められていません。ただし、1ヶ月単位での計算において、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは認められています。
• 手当の取り扱い:家族手当や通勤手当、住宅手当、賞与などの手当は、残業代の基礎賃金に含まれません。(一律で支給される手当を除く)
• 法定内残業と法定外残業の違い:所定労働時間を超えても法定労働時間内であれば、割増賃金の支払い義務はありません。
例:1日7時間勤務の場合で2時間残業した場合は最初の1時間は割増しない
✅ まとめ
超過勤務手当の計算は、労働基準法に基づき、正確に行う必要があります。企業は、適切な割増率を適用し、労働者に正当な賃金を支払う義務があります。また、労働者自身も、自分の労働時間と賃金が適切に計算されているかを確認することが重要です。
労務管理に不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
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