パートタイム労働者の契約更新における「上限の有無」について社労士が解説
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉

- 8月6日
- 読了時間: 4分
更新日:9月16日

📕 目次
✅ はじめに
パートタイム労働者の雇用契約は、有期契約(契約期間に定めがある形態)であることが一般的です。その際、"契約更新に上限を設けるべきか"という点について、事業主様からご相談をいただくことがあります。今回は社労士の視点から、法律・実務・トラブル防止の観点で解説いたします。
✅ 法的に「契約更新の上限」は必要か?
▶ 原則として法的義務はなし
労働基準法や労働契約法には、パート契約に対して「更新回数の上限」を設ける義務はありません。ただし、2024年4月より労働条件通知書には「更新上限の有無」については明示が義務化されています。
※更新を繰り返すことで、実質的に期間の定めのない雇用(=正社員扱い)とみなされる場合があります。
✅ 就業規則や契約書に「更新上限」を設けるメリット
▶ トラブル防止に効果的
契約更新の回数や通算期間の上限を明記することで、以下のようなトラブルを防げます。
「なぜ自分だけ更新されなかったのか?」という不満や争い
実質的な正社員扱いとみなされるリスク
無期転換申込との混同
▶ 記載例(労働条件通知書・契約書)
契約期間:2025年7月1日~2025年9月30日
契約更新の有無:あり(勤務状況、業務量、能力等を総合的に判断)
契約更新の上限:通算契約期間は最長5年間とする。✅ 無期転換ルールとの関係
▶ 労働契約法第18条の要点
有期契約が通算5年を超えた場合、労働者からの申込みにより無期契約に転換できます。
通算5年のカウントには、更新の回数は関係なく「契約期間の通算」で見られます。
✅ 5年の更新上限を設け、雇止めすることは問題なのか?
有期労働契約において更新年限や更新回数の上限(更新上限)などを設けることが、直ちに法律違反となるものではありません(使用者と労働者との間で合意がなされた場合には、労働契約として成立することとなります)。ただし、雇止めの有効性については、雇止め法理(労働契約法第 19 条)に基づき最終的には司法判断されることとなりますので慎重な対応が必要です。
※無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前の雇止めや契約期間中の解雇等を行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という労働契約法第 18条の趣旨に照らして望ましいものではありません。また、有期労働契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、不当な雇止めとして許されない場合もありますので、慎重な対応が必要です。
✅ 社労士がすすめる実務対応ポイント
✅ まとめ
パートタイム労働者の契約更新に上限回数を設けることは法的義務ではありませんが、トラブルを未然に防ぎ、雇用の透明性を高めるためには、上限や更新基準を明記しておくことが望ましいです。特に「通算5年以内」の上限設定は、無期転換ルールとの整合性を保つうえでも重要です。
雇用契約書や更新通知書、就業規則の整備でお困りの場合は、ぜひ社労士にご相談ください。
病院、クリニック、歯科医院など医療業に強い医療専門の社労士事務所は
MSL社会保険労務士事務所
社会保険労務士 綱島 渉

経歴
1989年 神奈川県生まれ
2013年 明治大学 理工学部 応用化学科 卒業
2013年 医療業界 人事部 入社
2023年 MSL社会保険労務士事務所 開業
約10年医療業界の人事部にて採用活動、人材定着プラン作成、労務トラブルの解決、就業規則の作成、労働、社会保険の手続き、給与計算業務に従事しておりました。
また、管理職も経験させていただきました。今まで、培った経験、専門知識、若さを活かし、お客様を全力でサポートさせていただきます。











