【社労士が解説】随時改定とは?報酬が変わったときの「月額変更届」のルールと注意点
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 7月7日
- 読了時間: 4分
更新日:6 日前

✅ 目次
✅ 1. 随時改定とは?その意味と目的
従業員の報酬に大幅な変更があった場合、年1回の定時決定(7月改定)を待たずに標準報酬月額を見直す制度が「随時改定」です。
給与が大きく変わったにもかかわらず保険料がそのままでは不公平が生じるため、保険料や将来の年金額に正しく反映させる必要があります。
✅ 2. 随時改定が必要になる3つの条件
随時改定が行われるのは、次の3つの条件をすべて満たしたときです。
(1)固定的賃金に変動があった
例:昇給、降給、手当の新設・廃止、支給額の変更など
(2)変動後3か月の平均報酬と従前の標準報酬月額に2等級以上の差
がある
給与の大幅な変動が条件です。
(3)3か月ともに支払基礎日数が17日以上(短時間労働者は11日以上)ある
月によって出勤日が極端に少ない場合は対象外となります。
すべてを満たした場合 → 変動があった月の4か月目から改定されます。
※社会保険料を翌月徴収している会社では、5ヶ月目の給与から反映
✅ 3.勤務時間が変更となった場合は?
時給単価の変動はなく契約時間のみ変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となります。(育児短時間など)
✅ 4. 随時改定の具体例(昇給・降給など)
例1:昇給による改定
4月に昇給 → 4月~6月の報酬平均を算定
2等級以上の差があれば、7月分から新しい標準報酬月額が適用されます。
例2:降給・役職手当の廃止
固定的賃金が減り、報酬月額も下がる
同様に、2等級以上の差が出れば随時改定の対象に。
注意点:一時帰休や休職はケースにより扱いが異なる
休職による休職手当 → 対象外
一時帰休で長期的に報酬が下がった場合 → 対象となる場合あり
✅ 5. 手続き方法:いつ・どこに・どう提出する?
■ 提出時期
条件に該当したら「速やかに」提出が必要です。
■ 提出先
事務センターまたは管轄の年金事務所
■ 提出方法
電子申請(e-Gov)、郵送、または窓口持参
使用様式:「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」
✅ 6. 随時改定の注意点とよくある誤解
❌ 誤解1:「残業代が増えたから改定になる?」
→ × 非固定的賃金(残業・歩合給など)の増減だけでは対象外
→ ◎ 固定給(基本給や手当など)の変動が前提です
❌ 誤解2:「1等級でも差があれば改定される?」
→ × 原則は2等級以上の差が必要
→ ただし、上限・下限等級をまたぐ場合は1等級でも可、また、育児休業等終了時報酬月額変更は対象です。
✅ 6. よくあるQ&A
Q:さかのぼり昇給があった場合は?
→ 差額が支払われた月が「変動月」となり、そこから3か月の平均で判定します。
Q:随時改定後、さらに昇給した場合は?
→ 新たな変動があれば再度随時改定の可能性があります。
✅ 7. まとめ
随時改定は、従業員の社会保険料・年金額に直結する重要な手続きです。
固定的賃金の変動
2等級以上の差
支払基礎日数の条件
この3点を正しく押さえ、速やかに対応することで、企業と従業員双方にとって不利益のない社会保険運用が可能となります。
社労士が運営する当事務所では、報酬月額変更届の提出代行やアドバイスも承っています。お気軽にご相談ください。
病院、クリニック、歯科医院など医療業に強い社労士事務所は
MSL社会保険労務士事務所
社会保険労務士 綱島 渉

経歴
1989年 神奈川県生まれ
2013年 明治大学 理工学部 応用化学科 卒業
2013年 医療業界 人事部 入社
2023年 MSL社会保険労務士事務所 開業
約10年医療業界の人事部にて採用活動、人材定着プラン作成、労務トラブルの解決、就業規則の作成、労働、社会保険の手続き、給与計算業務に従事しておりました。
また、管理職も経験させていただきました。今まで、培った経験、専門知識、若さを活かし、お客様を全力でサポートさせていただきます。